いでたち通信は点字に翻訳し、視覚障害者に配布されています。
 
  
       

  1.俳句入門                      馬場 威力

 昔々のことだが、男性ボランティア「いでたち」の有志が誘い合い、経験豊かな中年女性の先生をお招きして、俳句の手ほどきをしていただいたことがあった。40人ほどいたグループで、参加者を募った時はわずかに三、四人が手を挙げただけだったが、いざ集まってみると10人を超え盛況となった。
 いずれも人生経験は豊かだが、俳句となると色とりどりの皆さん方。最初は緊張気味に見えたけれど、そこは仲間の皆さん、すぐにワイワイガヤガヤ、楽しいやり取りとなった。気さくな先生は「五、七、五と並べて、その中に季語を入れれば出来上がりです。誰にでも出来るのが俳句です」と、いとも簡単におっしゃる。一時間ほどして「各人が五句ずつ書いて提出して下さい。これが句会ですよ」と、先生の声。さあ大変、と一同大いにあわてたが、そこはたしなみ深く学のあるいでたちの紳士の皆さん、しばらく沈黙の後真面目にすらすらと書きに書き、書き終わり、先生のもとに恐る恐る差し出した。
 いっそう賑やかな選句作業を終えて、ベテランの先生が念入りに添削と講評。なにしろ俳句は全くズブの素人連中のこと、基本中の基本である五七五を外れたもの、季語が二つあるもの、季語がないものなど、先生の講評のひとことひとことに笑いあり涙ありで、一同楽しむことしきりだった。
 添削していただいて見違えるようになったお互いの力作を前にして「どうだ、うまいものだろう」と、明るく爽やかな声と表情が、とても印象的だった。あの時の仲間、その後、どうされていらっしゃることやら。

   2.牛丼                        いでたろう

材料二人分
牛薄切り肉250グラム、玉ねぎ中半個、水250CC,醤油大さじ2、酒大さじ1、砂糖大さじ1、みりん大さじ1、顆粒和風だし小さじ1、しょうが少々
1)水、醤油、酒、砂糖、みりん、和風だし、しょうがを小鍋で煮る。
2)櫛形にきった玉ねぎを入れ中火で5分煮込む。
3)牛肉をほぐしながら加え、アクを取る。
4)弱火で15分煮込んで出来上がり。
5)丼のご飯の上に乗せ、お好みで紅しょうがを乗せる。
 ポイント 一度冷ますと玉ねぎ、肉に味が良くしみる

 

  3.思いつくままの走り書き―障害は多様―         中村 斉

 だいぶ前の事だが、横浜美術館でドガの踊り子を鑑賞した。ずっと観たいと思っていたので、学芸員の方や同時に鑑賞した多くの方々のことばの支援で、いまでも私の心の宝物になっている。あの頃はまだ視力が残存していたのかなと思う。
 
重い腎臓のため病院内の学級に通っていたS君と図書室に行ったことがあった。「どの本でもいいから自由に読みなさい」と指示されると、彼はお目当ての本があって料理の本を選び机に戻ると、まことに綺麗に印刷された料理を手で撫でてはその手を口に運んだ。彼は印刷された料理を真剣に食べていたのだ。
 筋萎縮症のT君がポツリといった「蚊が怖い。顔にとまっても血を吸われても、蚊を追い払うことが出来ないんだ」。真に肌のきれいな腕や手ではあったが、すでにその機能はほとんど失われていたのだ。
 一部だけ目が見える人が、「君は何をみたい」と幼児の頃から全盲の中年の紳士に質問した。紳士は即座に答えた「青空がみたいです。空がどんなのか教えてくれればうれしい」質問した人はこう言った。「ごめん、私はあなたが納得出来るように空を説明出来ない。でも青空を見上げるとスカッとするんだ。わたしですか、そう、死ぬ前にもう一度妻と娘と息子の顔をみたいです。」

  4.編集後記                      菊地 賢三

 このいでたち通信は、点字版、墨字版、SPコード版、Eメール版で皆様にお届けし、いでたちのホームページに掲載しております。現在点字プリンター不調の状況が続き、点字版の方にはご迷惑をおかけしております。また、編集委員の方から皆様にお問い合わせということで、ご希望ご意見を求めておりますが、あまり芳しいご返事をいただいておりません。 そこで皆様には当いでたち通信の配布配信についてどのような方法でも結構ですから、ご希望をお寄せいただきたいと思います。ご希望をお寄せいただけなかった方には、配布配信を見合わせいたしたいと思います。よろしくお願いします。


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