いでたち通信は点字に翻訳し、視覚障害者に配布されています。

1. 目標に向かって努力 朽木幸勇
 今年5月、80歳の三浦雄一郎氏が8848メートルのエベレスト登頂に成功した。80歳での登頂成功は世界新記録である。この日に向かって日夜、人知れず努力していたことがマスコミで報道されていた。
彼よりもはるかに若い自分は、日頃なにを目標に努力しているだろうか。退職後は晴耕雨読の毎日である。晴耕に関しては農地を借りて80坪ほどの自家菜園での農作業や、ゴルフ、ウオーキングなどで意識的に肉体を使う生活を心がけており体力にはまだ自信がある。しかし雨読については特別な読書や書き物などをやっているわけでもなく、「脳力」の劣化を心配している今日このごろである。肉体的な能力を調べる方法は簡単である。 100メートルを何秒で走れるか?数字ではっきり確認できるが、「脳力」はなにで判定できるのだろうか。

 今年6月、今の自分の「脳力」を知るために、朝日新聞、ベネッセ共催の語彙・読解力検定準1級を受験した。この検定は2011年から年2回実施されているもので今回が通算5回目。単なる漢字検定とは違い辞書語彙、新聞語彙、読解力の3分野から出題される。今回から最難関の1級が新設され合計5ランクで2万6千人が受験している。受験参考書も売られているが、素の自分を知るために敢えて特別な勉強もせず受験した。受験会場は制服姿の高校生やビジネスマン風の若者が中心で、自分と同じ年頃の人は少なく場違いな雰囲気だった。
受験の結果通知書には820ポイントで合格となっていた。70歳以上で準1級を受験したのは386人(全体の1.5%)、その中で最年長の合格者は87歳だった。取り敢えず自分の「脳力」がわかった。次は参考書をどっさり買い込み、何年先になるかわからないが1級合格に挑戦するつもりだ。

2. なすとじゃこのピリ辛煮 畠山 工
素材分量2人分

なす2個、ちりめんじゃこ3分の1カップ、赤唐辛子1本、青じそ3枚、ごま油大さじ2、しょうゆ大さじ1、みりん大さじ1、酒大さじ1

(1)なすは縦2つ割りにし、斜め薄切りにする。

(2)青じそは粗みじん切りにする。

(3)赤唐辛子は種を取り除き、小口切りにする。

(4)フライパンにごま油を熱し、なすをこんがり炒める。ちりめんじゃこ、赤唐辛子、調味料を加え、汁気がなくなるまで炒め煮にする。

(5)器に盛りつけ、青じそをちらす。

 エネルギー204キロカロリー、 塩分12グラム


3. 「思いつくままの走り書き」第127回
  −「わが盲想」という名の「快書」−
中村 斉
 快とは心よいという意味だ。楽しく読んで大笑いして、涙して、一語で評するなら「感動の書」だ。だから僕は「わが盲想」を快書と呼びたい。特に視覚障害者の皆さんにはアルアル感を持ちながら読み進められる文字通りの、心地よい一冊だと思う。と言っても安っぽいハウツー本ではない。正真正銘の「面白感動の本なのなのだ。それでいいのだ」とバカボンパパみたいに叫びたいのだ。

 無鉄砲といえば無鉄砲なのだが、網膜色素変性症のためすでに視力を失いながらも、世の中の人々の役に立つ法律家になろうと国立大学で、法律を学んでいた19歳のアブディン君は、国内紛争のため休講つづきの大学を退き、人々の役に立つのは法律家だけではないだろう。それならば、と思いを巡らし、たまたまテレビで見た「日本の鍼灸」に興味をもったのだ、そして盲想したのだ。(妄想ではなく盲人が考えるのだから盲想と軽く明るく考えていただきたいとアブディン君になり代わって申し上げます)
 とはいえ、あのサハラ砂漠を国内に持つ南の国から雪も降る国ニッポン・その国の国語を全く知らぬ国ニッポンへ鍼灸を学びに留学しようというのだ。スーダンの障害者を支援
する団体のオファーがあったので、最低の生活は保障されているとはいえ、多くの難問を抱えながらも、アブディン青年は正面突破、難問を解決しようと努力する。
 彼を信じるやさしい母は、すんなり留学をOK。ライオンの異名を持つ父のOKを如何に得るかの記述辺りから、みなさんはすっかりアブディン応援団に名を連ねることになるはずだ。中途失明者の僕にはアブディン君と机を並べ、福井県立盲学校で盲人心得の講座を聴講させてもらった気がする。興味深いQ&Aが、盛り沢山のオヤジギャグと共に解決されて行くのは痛快。これ以上私がネタばらしするのはやめよう
 日点のベテラン朗読者Kさんの歯切れの良い音訳でアットいう間に読了してしまった。「障害を言い訳の材料にしない」という信念の言葉が耳の中でエコーし続けている。誰かに紹介したいと思う快書だ。


4. 編集後記 菊地 賢三
 罹りたくない病気のトップクラスにアルツハイマー症がある。脳の中にアミロイドベータというたんぱく質の一種が異常に凝集することが原因、とまではわかっているらしい。このアミロイドベータは正常な脳にもあるもので無害だそうです。薬の開発が進められ、生産抑制、凝集抑制、分解促進が求められるのですが、この薬の開発が失敗続きでつい最近もアメリカで2年間の治験が失敗しました。当面出来ることは生産抑制には眠ること、凝集抑制には肉や乳製品を控えること、分解促進には有酸素運動だそうです。


 いでいでたちトップページ            目次ページへ