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ぶつかる

菊地賢三
 昨年11月の日経コラムの記事に紹介された、詩人の吉野弘さんの受けた強い衝撃。それは東京近郊に住む眼の不自由な若い女性会社員の方が、通勤が大変でしょうと聞かれ、あっちこっちぶつかりながら歩きますからなんとか、と微笑み、ぶつかるものがあると安心ですから、と答えたという。吉野さんは、眼の見える自分には人も物も、避けるべき障害と感じるが、彼女にとってはぶつかってくる人や物は、世界から差し伸べられる荒っぽい好意と感じ、世界とむすばれることと感じていることを知ったことだそうだ。
 私も毎日通勤をしているが、他人への迷惑や他人の眼を気にしており、痴漢冤罪にならないよう、意識的に身体を離したり、つり革に両手をゆだねたりしている。町内会の仕事では個人情報の管理に大いに気を使わされている。こういう事からは、会話や良い意味のスキンシップが少なくなり、世の中の良い方向には向かってないように感じる。

2  鶏手羽のにんにく焼き 畠山工
 素材分量2人分、
鶏手羽中300グラム、しょうゆ小さじ3、酒小さじ2、強力粉大さじ半分、
ピュアオリーブオイル大さじ2、にんにく2片、赤唐辛子2本、こしょう少々、
レモン半分、ローリエ(月桂樹の葉)2枚、
(1)赤唐辛子は半分に切って種を取り除き、にんにくは包丁でたたきつぶす。レモンは三日月方に切る。
(2)鶏肉にしょうゆと酒をまぶして20分ぐらいおいて、こしょうと強力粉をまぶす。 (3)フライパンを中火にかけてオリーブオイル、にんにく、赤唐辛子、ローリエを入れて香りが立ってきたら、鶏肉を並べ入れて焼く。
(4)カリッとしたら裏返してさらに焼き、両面をカリカリに焼きあげる。
(5)器に盛り、三日月がたに切ったレモンを添える。
エネルギー335キロカロリー、塩分1.0グラム、

3 一句拝見(いでたち4月いろは句会より)  
春光の川面ゆるがせ谷戸の風      まさひろ
白藤の甘き香りの棚下に         じゅんのすけ
山若葉今朝の裏山香りなす       おさむ
三島から静岡までの春の富士      たけこ
「思いつくままの走書き」 (86) ヌード・ポルノ 中村斉
 4月下旬まで暖房が欲しい日がつづいて、今年の春は本当に来るのかと疑いたくなるほどだったが、新聞ラジオなど、情報の世界では別の春の話題が先行した。
 4月の初旬朝日新聞の朝刊に有名なバレリーナのヌード写真が全面広告として掲載され話題になったようだ。男性ばかりでなく女性も乳頭まで露にした美しい裸身に羨望の眼を向けたとも聞いた。一方ラジオでもその広告の是非を巡って喧喧諤々(かんかんがくがく)の議論が電波に載ったりもした。昔からアガぺーからエロスまで性をテーマにした小説は多数あって多くの作品が点訳または音声訳されていて、私も渡辺淳一氏の話題作などを読んでいて、晴眼者の話題に乗り遅れることはなかった。けれども、ヌード写真等について、これまで盲界の情報としては伝わってきたことはなかったように思う。
 この冷えきった春に、日盲連の情報網を通して眞にホットな「手で見るヌード写真」と「世界初の視覚障害者のためのポルノ雑誌発行」の記事がニュースとして伝わった。記事を読んでみるとカナダで二年ほど前に発刊されたそうで最近話題になっているという。発刊者の言葉を借りると「視覚障害者はこれまで、ポルノの世界から不当に閉め出されてきたのだ」そうだ。写真に添えた点字を読んでポルノの世界を感じ取る仕組みという。
 その雑誌一冊邦貨にすると一金二万円也だそうだ。すでに泉の水もかれかかった私にとっては、不用品として仕分けざるを得まいが、ご覧になりたい方は、まず英文または仏文の点字を学習すること。さらに前記の金額を用意されることだ。
 さて明日は、この春10度目の低気圧も通過して快晴の天気予報。私は、気分を変えに青葉の香りでも胸いっぱいに吸い込みに散歩に出かけるとしましょう。2010 April 28 記

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編集後記

井上進

 電子レンジは便利な調理器具です。料理をあたためることはもちろん、野菜の下ごしらえやトマトソース作り、鰺の開きを焼くことまでできます。ただ残念なことに最近は高機能になり過ぎてわかりにくいのです。先日家の電子レンジのタイマーが壊れ、修理不能とのことで買い替えました。が、何しろ複雑で高齢者や障害者にとっては、しごく使い勝手の悪いものになっています。もともと冷やご飯を温める、酒の燗をつける、焼きイモを作るぐらいしか電子レンジに期待していない私どもには、タイマーだけで操作のできる単機能のものの方がいい。しかしそういうのはもう売っていないのです。たとえば携帯電話にしても同じです。高機能になり過ぎ、使いにくいものにしているという感じがします。
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いでたち通信は点字に翻訳し、視覚障害者に配布されています。