1  一人歩き 馬場威力
 先日、ワールドポーターズで開催された講演会、それは、「ユニバーサルデザイン」を、いかに進めて行くのか、と言った、内容豊かな面白いものだった。
 その帰途のこと。JR桜木町の駅前を白杖の初老の女性が足早に歩いているのを見かけた。誘導者がいない、完全な一人歩きだった。どこへ行くのか、と思い後をつけて歩いた。駅の中に入り、地下鉄の方へ。それもある所では、ブロックの上を、ある所では、ブロックを無視して歩く。
 地下鉄へのエスカレーターも問題なく乗れ、左手でベルトを確保。降りた所から、二番目のエスカレーターを目指して、すたすたと歩き続ける。
 そして、いよいよ最終コーナー、さすがにブロック上を通る。地下鉄の改札口の寸前でベビーカーを中心にした4人家族がブロック上を近付いて来る。私は、彼らが視覚障碍者を避けるもの、と思っていた。が、避ける気配は全くなかった。思わず「危ない!」と大きな声で叫んだ。正にニアミスだった。
 4人連れの親子は一言の断りもなく立ち去った。

2 きのこと牛肉のしょうゆ炒め 畠山工
 素材分量2人分、
まいたけ70グラム、シメジ70グラム、牛バラ肉スライス100グラム、
ごま油大さじ1、しょうゆ大さじ1、酒大さじ1、にんにく半片、
(1)しめじは小房に分け、まいたけと牛肉は一口大に切り。
(2)にんにくはみじん切りにする。
(3)フライパンにごま油を熱し、牛肉を炒める。半ば火が通ったら、きのことにんにくを加え、炒める。
(4)フライパンの肌から、しょうゆと酒をまわし入れ、からめ合わせる。
 エネルギー185キロカロリー、塩分1.2グラム

3 一句拝見(いでたち9月いろは句会より)  
十尺の高さサボテン花咲かせ       加藤孝二
白雲のゆっくり流れし里の秋        成田真啓
あの雲に慈雨の待たれる夕べかな    宗像普
兄弟の卒塔婆供養施餓鬼かな       斉藤準之助
朝夕の戸の開け閉めも秋なりし       千葉宰
愚痴こぼし学僧麦湯沸かしおり       堀越愛子
佇みし富士五合目は霧の中         中里武子

「思いつくままの走り書き」(68) ―色彩― 中村斉
 リコーダーアンサンブル「風」の演奏を楽しんだ。「ルネッサンスのウイーンへ・・・」などと呼びかけたせいか、集会に固い雰囲気を感じていた。私も、少しだけ改まった服装だったが、立ち上がり、演奏の司会のO先生をご紹介しようとしたとき、ガイドヘルパーのMさんが「あら、中村さん、今日はとてもおしゃれよ」と着衣の形やポシェットの色との取り合わせなどの説明をされた。一瞬に、こわばった会の空気が和んで演奏を楽しむ雰囲気が生まれた。
 一昔前は色を感じ取れない視覚障害者に「色彩の話題は無用」論が主流。しかし、いまは違う。花や持ち物、服装の色柄に関心を持ち、自分好みの色や図柄の衣類を身に付けて、自己表現を楽しむ視覚障害者も多い。色彩を見分けるセンサーが開発され、音声や楽器音で知らせる色彩測定装置さえ、高額ながら市販されている。
 「風」のみなさんの服装はカラフルな生地でひだの多い機能的な半袖のブラウスにシックな黒のパンツを合わせ、スカーフでアクセントをつける、如何にも優雅なものだったと知ったのは終演後。でも、イメージはリコーダーの柔かい音色と結びついて、いまでも心に演奏の様子を描くことが出来る。

 編集後記                井上進
 中村さんが書かれていますが、私も目の不自由な方に色の話はタヴーと思っていました。が、あるとき先天的に目の見えない方をバザーに案内しブローチを選ぶ際に「年だから派手な赤や黄色でないのがいい」と、気に入った形のブローチを選んで私に「色は?」と聞き、ベージュとオレンジ色のブローチを買ったのに驚きました。色を一度も見たことがないのに、その方は人とのふれあいの中で色の感覚をつかんでいるのです。以来、私は目の不自由な方と色の話ができるようになりました。
 視覚障害者用の色彩を見分けるセンサーが開発されたとのこと、喜ばしいことです。

いでたち通信は点字に翻訳し、視覚障害者に配布されています。