1 病院生活 馬場威力
 私の知人、数年前に、パソコンを通じて知り合った喜寿をお迎えの全盲の方が、この度変形性膝関節症を治療するために病院で33日間も生活された。
 私も、13年前に約一ヶ月間の病院生活を経験したことがあるけれど、何かにつけて不便だった。特に、消灯後の時間の過し方だった。ラジオを聞けばよいのだろうけれど、問題は本を読むことが出来ないことだった。文字を通じて外からの情報を入手することに慣れていた者にとっては、不自由極まりない毎日だった。
 ところが、である。その喜寿のおばあちゃんは点字の使い手である。時間に関係なく、読みたい時には、いつでも本を読むことが出来たのだった。お見舞いに行く度に本を読んでおられた。目が見える人は不便ですね、とニコニコしながら、慣れ親しんできた指先で器用に、すばやくページを追っていた。
 この点、中途失明者で点字を理解出来ない人は、さぞ不便なことだろうな、と思った。

2 厚揚げの煮物 畠山工
 素材分量2人分、
厚揚げ1枚、牛ひき肉100グラム、干ししいたけ2枚、ねぎ5センチ、
しょうゆ大さじ1、サラダ油小さじ2、酢小さじ1、片栗粉大さじ1、
オイスターソース小さじ2、酒大さじ1、砂糖小さじ半分、鶏ガラスープ適量、
にんにく適量、しょうが適量、青ねぎ適量、
(1)厚揚げは湯通しして油抜きし、一口大のそぎ切りにする。
(2)干ししいたけはもどして粗いみじん切りにする。青ねぎは斜め薄切りにする。
(3)にんにく、しょうが、青ねぎはみじん切りにする。
(4)鍋にサラダ油、みじん切りにしたにんにく小さじ2・しいたけを入れて中火にかけ、香りがたつまでゆっくり炒める。
(5)みじん切りにしたしょうが小さじ1・ねぎ大さじ2を加えて炒め合わせ、ひき肉も加えてぽろぽろになるように炒める。
(6)カップ1杯のお湯と調味料を加えて沸騰させ、厚揚げを加えて6分ぐらい煮て、酢を加える。
(7)片栗粉を倍量の水で溶いて加えとろみをつける。器に盛り、斜め薄切りにした青ねぎを散らす。
 エネルギー316キロカロリー、塩分2グラム

3 一句拝見(いでたち4月いろは句会より)  
生垣の赤き新芽や雨上がり      加藤孝二
花見酒飛び交う声も国訛り       成田真啓
古暖簾これぞ江戸前浅蜊飯      宗像 普
裏山にミモザの花のこぼれおり    斉藤準之助
春泥や校門にあり靴の跡        堀越愛子
あるなしの風にも散りて山桜      中里武子

思いつくままの走り書き(63) 硬貨の分別  中村斉
 私の目には物も建物も形を成さずただ総てが「おぼろ」に映るだけだが、流通している硬貨を間違いなく区分けする自信がある。傷つけたり変形させたりギザギザをすり潰してなければ100パーセント弁別OKだ。もっとも私だけの特技ではなく、私の周囲の視覚障害者はほとんどができることだ。
 といっても見分けるのではなく、指先で確認するのだ。私の場合、赤提灯を巡り歩いていた頃からだろうか。残金を他人に悟られずに数えたのが始まりだったかもしれない。何の学習でも、比較して「同じ」と「違い」を発見することからスタートするものだ。穴あきの硬貨は5円50円の2種類。比べれば50円にはそれなりの重みと風格がある。次にギザギザのあるものを上記の観点から同様に比較し、特徴を指先に感じて記憶する。10円玉は発行年によりギザギザのあるものとないもの2種類があるが、同じ仲間と判断するのはさほど困難ではない。ポケットに多額の硬貨をつめ込むとジャケットの型がくずれるのが心配だが、いつどこでも静かに楽しく指の感覚を高められる。晴眼の方にゲームとしてお奨めする次第である。なあに、1日10分5日間も練習すれば免許皆伝となるでしょう。

 編集後記                井上進
 いでたち通信は発刊以来7年間、月2回、点字版、SPコード版、墨字版それにメールで発信を続けてきました。が、執筆者が固定化し負担に感じる方もおられ、また特に点字版が、その性質上少ないときでも7ページ、多いときには10ヘージとなるため、読む方の消化不良を起こしている様子が伺えることから、残念ではありますが、月1回の発行にとどめて様子を見ることにしました。ご了承いただき、ご意見を伺いたいと思います。
 なお私たちのグループでは、たとえば図書の点訳や文書のSPコードづけなどIC技術で可能なことについての個別のご要望に応じられますので、遠慮なくお申し付けください

いでたち通信は点字に翻訳し、視覚障害者に配布されています。