1 色と形 馬場威力
 子どもたちだけではなく、この地域の大人でも、全盲の人々は真っ暗闇、暗黒の世界に居るのですか、とよく聞かれる。
 ある時、数人の小学生と生まれながらの全盲の方とおしゃべりをした。その時も、子どもたちは「暗い世界」を当然のことのように思い、質問した。
 そのおばあちゃん曰く、物心ついた時、盲学校で勉強していた時、初めてこの世の中には具体的な形や色をもった物があることを知ったんですよ、と。だから、黒とか、白とか、明るいとか、暗いとかがないんですよ、との話に子供たちは分かったような分らない顔をしていた。
 それだけに、表意文字の漢字を覚えるのに四苦八苦することになる。木偏とか、草冠などは理解に苦しむことになり、それだけに偏(へん)や旁(つくり)や冠(かんむり)を基本としている8点漢点字を理解するのは大変だ。その全盲のおばあちゃんも、私が関係していた横浜漢点字羽化の会の講習会で漢点字を勉強したことがあった。良いことは理解出来ても、とても、とても難しかった。

2 ローストチキン 畠山工
 素材分量2人分、
骨付き鶏もも肉2本、エクストラバージンオリーブオイル大さじ2、塩少々、
ブロッコリー半株、プチトマト6個、じゃがいも4個、
酒大さじ2、しょうゆ大さじ2、みりん大さじ2、
(1)とり肉は、流水で洗って水気をよく拭き取り、火の通りがよくなるよう、裏がわの骨にそって切れ目を入れる。
(2)バットに酒、しょうゆ、みりんを入れ、鶏肉の両面にもみこみ、30分位おく。
(3)じゃがいもはよく洗い、皮つきのまま四等分に切り、オリーブオイル大さじ半分をからませておく。
(4)天板にオーブンシートを敷き、鶏肉の汁気を切り、皮目を上にして並べ、はけでオリーブオイルを全体に塗る。じゃがいもも周りに並べる。
(5)オーブンに入れ、180度で20から30分位焼く。竹串を厚みのあるところに刺し、すんなりと通ったら焼き上がり。
(6)ブロッコリーは小房に分け、塩少々を入れた熱湯でゆでる
(7)器に焼き上がったとり肉とじゃがいもを盛り、ブロッコリーとプチトマトで飾る。
 エネルギー773キロカロリー、塩分2.8グラム

3 一句拝見(いでたち11月いろは句会より)  
空赤く染まりし苅田鳶舞ふ       加藤孝二
一つ咲く 風の椿の ゆれ通し     成田真啓
野分け晴れ園児募集のビラ落とし   宗像普
万両の庭の日差しの届きけり     斉藤準之助
高原の桜紅葉の散るばかり      千葉宰
神の留守只松籟を聞くばかり     中里武子

「思いつくままの走り書き」(55) 阿吽の呼吸  中村斉
 私は1931年生まれ。小学1年生の国語読本のはじめは「サイタサイタ サクラガサイタ」と、声をそろえた。私達の何年か後、多分国民学校になったときからは「こまいぬさん あ こまいぬさん ん」で勉強を始めたはずだ。私達は「ススメススメ ヘイタイススメ トテチテタ トテチテタテタ」とただ突き進むことを良しと教えられたので「阿吽の呼吸などという言葉」は、だいぶ後になって知ったものだ。
 以前に私達と私達をご援助くださる方々との関係について「感謝を忘れるな」と「思いつくままに書いた」ところ、お読みになられた先輩から「あまり堅苦しく考えないで「阿吽の呼吸で」と助言をいただいた。相撲の立合いも、勝負事にもかかわらず両力士の「阿吽の呼吸を合わせる」ところに「日本人はひとつの美」を感じ取る、という。辞書に当たってみると、「阿は最初の文字、うんは最後の文字」とかかれていた。「心を通わせること」と理解した。皆さんよろしくと頓首する次第である。

入浴の効果と注意                     健康歳時記より
 心身の疲れを癒すには40度以下のぬるい湯にゆっくり長くつかるとよいでしょう。ぬるいお湯は、心身を鎮静、リラックスさせる作用があります。肩こりも、身体が温まることによって血行がよくなり、改善されていきます。その際にストレッチで首や肩を回すと、より効果的です。
 肌荒れが気になるときは40度のぬるめの湯に保湿成分が配合されたスキンケア入浴剤を入れて入るとよいでしょう。
 熱い湯に入ると、皮膚を乾燥させ肌の老化を早めることにもなります。また、あまり石鹸でこすらないこと、長時間入って肌をふやけさせないこと、入浴後の保湿剤の補充を十分に行うことも大切です。
 
思い出(2) かけそば  飯島みや子
 彼の病気は悪化し歩行も困難になり病院生活、そしてたらい回し不便な場所に移され、暫くぶりに私一人見舞いした。彼はすっかり性格が変わり頑固一点張り、病院内ではてこずる患者となって、やっかいな病人のようであった。ナースでは「あなたはどんな関係ですか」と半ば偏見の眼でみられた。彼の初めての突然の見舞い人にさぞ驚いたのでしょう。彼は痩せ細った姿で横になっていた。私が声をかけたら静かに起き上がって両手を出して私の手を求めた。夢かとばかり驚き私の手を握って喜んでくれた。
 「K君どうしてる」「中学生よ」「ふーうん、はやいなあ、会いたいなあ」とタオルで顔をぬぐいながらあの頃が俺は一番楽しかった。いっぱいお世話になってしまったね。K君にはよくお使いやら色々用事を頼んだね。そうそう12月末のこと、忘れもしない。都合でヘルパーがこなくて腹がへって日暮れに買い物を頼んだ時だった。小父さんパンが売り切れてなかったから今日は駅前のかけそばを買ってきたといった。どうして持ってきたと聞くとそばやの小母さんが危ないからとそこまで持ってきてくれて、僕はそこから持ってきたんだ。自転車はそばやの前に置いてあるから大丈夫だ。小父さんそれより温かいうちに食べなよといった。あの時のそばの美味しかったこと忘れない。あんまり嬉しくって食べながら涙が出てしまったら、小父さん泣くなよ男だろう。僕だっておばあちゃんだって助けてやるからと励ましてくれた。嬉しかったなあ、あの言葉いつまでも覚えている。忘れられないね。あのそばもう一度食べたいなあ。美味しかったね。何度も繰り返し顔をぬぐいながら、有難かったなあと。あれから間もなく急いだ。千の風に乗って。

7. 編集後記  井上進
 早いものでもう年末。本年最終の号をお届けします。この一年、原稿をお寄せいただき紙面を作ってくださった皆様、それにご愛読いただいた皆様、ありがとうございました。どうか良い年をお迎えください。
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