いでたち通信は点字に翻訳し、視覚障害者に配布されています。 
富士山に登る 馬場威力
 日本で一番高い山は富士山で、その高さは3776メートルもある。8月8日に静岡県の全盲の方が山登りのベテランの方4人と一緒に登った。
 徹夜で登り、太陽が顔を出す前に頂上に着いた。太陽が東の山並みのかなたから顔を出す時のことをご来光と言うのだそうだが、その瞬間の感激は、なんとも言えず、ただただ嬉し涙が流れて止まらなかった、とおっしゃっている。
 方や、東京の弱視の方が奥さんと一緒に、国際的な登山グループに入って、アフリカで一番高い山、高さが5895メートルもあるキリマンジャロに挑戦している。ヨーロッパなどから集まる視覚障害者は合計8人で日本人はお一人とか。
 このように、現在は自分で自分の生きてゆく方向を決められる、決めなければならない時代になった。不可能と思われたことも可能になった。
  
冬瓜の煮物 畠山工
 素材分量4人分、
冬瓜4分の1個、鶏ひき肉150グラム、
しらたき1袋、しょうが1片、
みりん大さじ4、しょうゆ大さじ4、
片栗粉大さじ1、かつおだし適量、塩少々、
(1)冬瓜は皮を剥いて中のわたを除き、大きめの一口大に切り、塩を入れた熱湯でゆでて冷水にとる。
(2)しょうがは皮をむいてすりおろし、しらたきは下ゆでし、食べやすい長さに切っておく。
(3)鍋にカップ3杯の水と調味料、塩少々を合わせ、ひき肉を加えて火にかける。
(4)ひき肉に火が通ってきたら弱火にしてアクを取り、冬瓜としらたきを加えてとろ火にして煮る。
(5)水とき片栗粉を加えてとろみをつけ、器に盛り、おろししょうがを添える。
エネルギー180カロリー、塩分3グラム。
 
一句拝見(いでたち 9月いろは句会より)  
日盛りや赤信号の長きこと       加藤孝二 
夕立に思案をしつつ雨宿り       成田真啓
羽黒山霧立ち込めて風つよし     斎藤準之助
蝉時雨選挙カーも連呼する       宗像普 
カンツォーネ酷暑忘れの大合唱    馬場威力
ぷりぷりの秋刀魚の刺身地酒飲む  中村齋
月徐々に徐々に明るく上りけり     中里武子
 
思いつくままの走り書き(6) 中村斎
 Kさんが「中村さん、これ、お守りとしてさしあげましょう」と、短く折りたたんだ白杖をさしだした。「ロンドンの石畳もたたいた杖です」と言葉を添えた。私は、すでにスライドさせて携帯できる杖を用意はしていた。しかし、これがなかなかにゴツくて、頼りになりそうだが、いかにも「杖だぞ!」という洒落っ気のないものであったので、細身の杖をいただいたのは正直なところうれしかったものである。
 白杖を持つことの意味は、自分の身を守るために周囲の状況を探るのが第一の目的。同時に「私は視覚障害者」と、周囲の人に知らせることである。中途障害者にとって、この「宣言」をする心がなかなかかたまらない。私もそうであった。だからKさんにいただいた白杖はその後何年も鞄の中で眠ることになる。
 ある晩私は街を歩いていた。横断歩道をわたると、自分の位置を確かめようといつもするように左手に立っている電柱を両手でふれた。ところが、思いもよらぬ、これまでに聞いたこともない、異様な恐怖感に溢れた女性の悲鳴がかえってきた。私が電柱と思ったのは信号待ちをしていた女性であった。私は平謝りに謝り早口に事情を話し、鞄から例の白杖をとりだした。この一件以後私は日常的に白杖をついて歩くようになった。
義経のふるさとと鞍馬を訪ねて 飯島みや子
 義経が幼少時代をすごした鞍馬を一度訪ねてみたいと思い行ってきました。寺の門前のかどやには大きな天狗の面が飾ってある。覗くと表情豊かな沢山の手作りの天狗面はみんな個性のあるもので、800円の値札が下がっている。
 仁王門を潜ってケーブルに乗り二分程で下車すると、そこはすがすがしい空気に包まれた山道で遥か向こうに比叡山の雄大な景色が見える。
やがて鞍馬寺の光堂に辿りつく。光堂には三尊天が奉天されて義経の遺留品や寺宝などが展示され、その他鞍馬山の自然植物、昆虫、鳥獣等の珍しいものを博物として展示している。
 霊宝殿の地下に入ると亡き人々の髪の毛が小さな箱に何千と納められ整然と並べられている。薄暗い灯が点り静かな音楽が淋しく流れ霊気が漂う。背筋が凍る思いで部屋を右往左往すると片隅に立派な本尊阿弥陀如来のお姿が見え線香を手向け冥福を祈りやっと出口に向かった。
 昼なお暗い曲がりくねったでこぼこ道や木の根っこ。北山杉が緑濃く生い茂る険しい八十七曲がりの九十九折り。女性の一人歩きに注意の立看板が目に止まる。恐ろしい場所。突然頭上をバタバタとこうもりが飛び立ったのには驚いた。そこには牛若が奥州に下る時名残を惜しんで背丈を比べた背くらべ石がある。道はますます険しくやがて義経堂の祠が見えた。せせらぎの音、木漏れ日に明るくなって山頂も間近。目指す奥の院、魔王院に着く。先客数名が休んでいてお互いに笑顔で労わってくれた。
 
編集後記 井上進
 福祉に携わる人なら、点訳と誘導一筋、現在も活動されている飯島みや子さんの名を知らない人はいないでしょう。「いでたち通信」の読者でもある、その飯島さんからご投稿いただきました。今号と次号に掲載しますのでご覧ください。
 「いでたち通信」も01年創刊以来今号で100号になりました。これも支えていただいた投稿者と読者の皆様のおかげと感謝しております。これからも目の不自由な方を中心としたふれあいのサロンとしての役割を果たしていきたいと考えています。ご支援よろしくお願いいたします。